フリーアドレス制で社内コミュニケーションは活性化できるのか?メリットとデメリットを紹介
フリーアドレス制とは、従来のように社内での社員の居場所が固定されず、社内のデスクや作業場所を自由に選んで仕事をするスタイルのことをいいます。最近、フリーアドレス制を採用する企業が増えてきました。中には、カフェテーブルやソファーなどを採用している企業もあり、より自由に、よりリラックスして仕事ができる環境が整っているところもあります。
ですが、フリーアドレス制は社内コミュニケーションが活性化するというメリットもある反面、職種によってはデメリットも生じます。そこで、ここではフリーアドレス制のメリットとデメリットについて紹介していきます。
社内のコミュニケーションがよいと社員にとって居心地がいいだけでなく、巡り巡って会社にも大きな恩恵をもたらす結果となります。それでは、具体的に会社はどんな恩恵が得られるのでしょう?ここでは、具体的に社内コミュニケーションがよい職場の特徴を見ていきましょう。
社内コミュニケーションがよい職場は風通しのいい職場とも言えます。社員それぞれがお互いのことをよく知っていれば、様々な機会に助け合ったり支え合ったりすることができるでしょう。
例えば、社員の中に幼い子供がいる人がいる、介護が必要な家族がいるということがわかっていれば、その社員がいないとできないミーティングを早い時間に調整するということもできますし、デイケアや保育所の終わる時間には、他の人が仕事の続きを引継いでおくということも可能です。
コミュニケーションが密にとれていないと、そのようなきめ細かな対応はできません。
風通しの悪い職場だと、該当社員は誰にも相談できず、一人で抱えなくてはならないでしょうし、そうなれば、毎日が社員にとっては綱渡りです。仕事に穴をあけてしまうということが発生しないとも限りません。
長い人生の中には、子供のことや親のこと、パートナーのことなど、誰でも「この時期さえうまく乗り越えられたら、あとは何とかなるのに」という時が訪れます。そんな時に「助けてほしい」、「支えてほしい」と声を上げられることは、社員に長く働いてもらうためにも、業務が滞りなく進んでいくためにも大事なこととなります。
業務がスムーズに進めば、生産性はおのずと向上するでしょう。特にお互いの関係がよい会社では、社員も居心地がいいので、自然と認証欲求が満たされ、メンバーの中で自分をもっと認めてもらいたい、社員の一員として会社に貢献したいと思えるようになるでしょう。
社員みんながそういう気持ちになれば、みんなで力を合わせて、一丸となって大きな目標に向かっていくことも可能です。
そして、そんな各社員の前向きな気持ちは、会社にとってもプラスになるはずです。会社で意外と気を遣うのが人間関係ですが、風通しのいい職場では、人間関係に必要以上気を遣わなくていい分、余計なことに疲弊することなく仕事に集中できるので、生産性も向上します。
離職率の高い職場は人材が育ちません。「新しく人材を入れればいい」と考えるかもしれませんが、新人が入るとその都度一から新人研修をし、ようやく慣れたかと思うと辞めて、ということが繰り返されていきます。
そうなれば、人材教育の仕事ばかり増えて、なかなか実際の仕事には集中できません。仕事が進まず、余計な時間とコストがかかることになるでしょう。
社内コミュニケーションがよくて、社員に会社に対する帰属意識が生まれれば、もはやその社員にとってほかのメンバーは家族のようなものになります。すぐに辞めたいとは思わないでしょう。離職率が低ければ、それだけ人材を長期にわたって確保できるだけでなく、時間をかけて育てていくことができます。そうすれば、結果的に会社にとってプラスとなるでしょう。
社内コミュニケーションがよければ会社にもメリットがあることがわかりましたが、それでは、フリーアドレス制は社内コミュニケーションにどんな寄与をするのでしょう?
隣り同士は話す機会も増えるものですが、フリーアドレス制になれば、日ごろ話す機会がなかった人とも会話する機会も増えます。そうなれば、性別や年齢、立場の違いを越えて、コミュニティが広がることでしょう。
世代間ギャップや男女の性差などを越えて、気づきを得ることも。そんな気づきは相手への理解や思いやりに結びつくかもしれません。いつも同じ相手と会話していると、特に新鮮さを感じることはないでしょうけれど、フリーアドレス制で自由に座ることができれば、日ごろは見えない風景も見えてくるはず。社内が常に新鮮だと、必然的に社内のコミュニケーションは活発になるでしょう。
固定の少ない人数でディスカッションしても新しいアイデアを生み出すのは至難の業ですが、様々な人とコミュニケーションを取ることができれば、新しいアイデアが生まれやすくなります。
フリーアドレス制で、様々なところに社員が座るようになれば、自分とは縁が薄い部署の人とも会話を交わす機会ができ、自分とは違った価値観を発見することができます。そんな広がりがある中では、アイデアの元となる発想も生まれやすくなるでしょう。また部署や役職の縛りを越えて、共同で新しい仕事を企画するということもしやすくなります。
フリーアドレス制では、机や椅子が固定されていないことも多く、そんな場合はレイアウトが自由に変更できます。席が自由だと、多くの人と話したい気分の時は輪の中心の方に、一人で集中したい時には隅の方と、その時々のシーンに合わせて移動することができます。
それによって、オンとオフの切り替えが簡単にできたり、気分転換ができたりすることも可能です。1つの机に縛られて仕事をするよりもメリハリがつきます。
フリーアドレス制にすれば、プロジェクトごとに集まることができるので、仕事が進めやすいというメリットがあります。固定席だった場合、プロジェクトごとに集まるということが難しく、わからないことがあったり、共有できていないことがあったりしても、ついつい後回しにしたり、まとめて解決しようとしたりしがちです。
しかし、フリーアドレス制ならば、臨機応変に集まれるのでちょっとしたことがあってもすぐに相談したり、聞いたりできて作業を円滑に推し進められます。問題点があったときにもお互いの席にわざわざ出向くようなこともなくなり、無駄な時間を費やすことが減ります。
集まって仕事をすることで、一体感が生まれます。近くにいればお互いの進捗状況もわかるし、相手の困っているところもわかり、チームで助け合うことができます。
作業を進める上で壁にぶつかった時に、すぐにやり方を変更したり、すぐミーティングをしたりできるのもフリーアドレス制のいいところ。そんなことが気軽にできることで、チームワーキングを円滑に進めることができるでしょう。
フリーアドレス制になれば、状況によっては人数分の椅子や机を用意する必要がない場合も出てくるでしょう。例えば、営業などで外回りが多い社員が数多くいる場合や、それぞれが会社に滞在する時間帯が違う場合などは、フリーアドレス制にすることで数少ない椅子や机で事足ります。
また、フリーアドレス制を導入するには、ペーパーレスは必須。そうなれば、用紙やそれを収納する収納ケースなど、こまごまとした備品も減らせるのでコストの削減にもつながります。
固定席だと、自分の縄張りが発生して、隣の距離が気になり、境界線ぎりぎりまでモノを置いたりしがちです。ですが、フリーアドレス制にして境界線をルーズにしておけば、縄張りという感覚は薄らぎ、意外と自分のスペースを冒されていると感じないことも。そうなれば、狭いスペースで用が足りてしまいます。
また、社員の中には、私物をたくさん持ち込む人もいますが、毎日移動することを思えば、社員それぞれの私物も必然的に少なくなるので、机も小さいもので事足ります。結果的に同じスペースでもたくさんの人が入ることができます。
フリーアドレス制になると、毎日どこにだれが座ることになるかわかりません。固定席では、自分の場所なので多少散らかっていても、気になりませんし、誰にも迷惑はかかりません。
ですが、フリーアドレス制になれば、散らかっていたり、汚れたりすると、すぐほかの人に気づかれてしまいますし、迷惑をかけることになります。そのため、公共の場という意識が芽生え、自分の出したごみや汚れはその日のうちに片付けるという習慣がつきやすくなります。
社員みんなが自分の身の回りの清潔に気を付けるようになれば、オフィスはいつも清潔ということになりますよね。そうなれば、特に清掃の時間を設けなくても、いつも清潔な環境が保たれます。結果として掃除の人を雇う必要もなくなりますのでメリットは大ですね。
それでは、フリーアドレス制にデメリットはないのでしょうか?実は職種によっては、フリーアドレス制は向かないということも言われています。それでは、フリーアドレス制のデメリットはどんなものがあるのでしょう?
フリーアドレス制にすれば、普段話すことのない人とも話すきっかけができる、多くの人とアイデアを交換できるという利点がある反面、常に誰かに話しかけられる、毎回お隣さんが違うので気を遣うということもあります。毎回新しい環境になるのは新鮮ではありますが、落ち着かないということもありますよね。
仕事にはインプットが必要な時もあれば、アウトプットが必要な時もあります。例えば編集の校正など、話しながらだと作業できない、周りが話していると集中できない、なんてこともあります。そうなれば、フリーアドレス制では、生産性が下がるということにも。それだと本末転倒ですよね。
フリーアドレス制は固定席に比べて相手の様子がよくわからないということがあるので、とにかく話しかけられやすい環境でもあります。固定席だといつも周りは同じメンバーなので、なんとなく「今忙しい時だな」「煮詰まっているようだな」ということがわかって、話しかけていいタイミングなのかどうなのかがわかるものですが、フリーアドレス制だと、新しい顔ぶれも多く、そういった細かな状況はなかなか把握しきれません。
そうなると、こちらの事情はお構いなしに相手から声をかけられたり、長話をされたりと、なかなか自分の時間を持ちにくいということがあります。また、フリーアドレス制は同じチームで作業をしていても、わからないところなどをすぐ質問できるという利点はありますが、逆に質問される方はその都度仕事が中断させられるという欠点にもなります。中には細かい点でいちいち質問されて、その社員につきっきりになってしまうということも。そうなればストレスが溜まってしまいそうですね。
フリーアドレス制になれば私物の持ち込みが減るので、社内がすっきりするという利点がありますが、その分、必要な私物も持ち込めないという問題も発生します。
インスピレーションを感じられるものは人それぞれ違ってきます。例えば、デザインなどの仕事では、会社で用意されているもの以外にも、自分の気に入った画集をいつもそばに置いておきたいという希望もあるでしょう。そういった細かいものが仕事に大きな影響を及ぼすということは案外多くあるものです。ですが、効率化が重視されれば、そういった一見無駄なものはそぎ落とされてしまうもの。結果的に、良いものを生産するという視点では抜け落ちてしまうことも多くあるかもしれません。
フリーアドレス制にして、自由にたくさんの人と交流を図れる環境があるのに、なんとなく、一度席が定まってしまうと固定しがちになるということもあり得ます。結局、自由とはいえ、もともとその場にいた人の縄張りを荒らしてしまうような感覚があり、移動しにくいということになってしまうことも。
そうなれば、フリーアドレス制にしても、気づけばいつも同じ席に座っていたということになってしまうでしょう。そして、お隣もいつも同じとなれば、結局固定席の方が便利だということになり、フリーアドレス制のいい面はまったく活用されず、悪い面ばかり残ることになってしまうことも。フリーアドレス制を導入するなら、社員の考え方も同時に変えていかないと、結局は無駄に終わったということにもなりかねません。
フリーアドレス制になれば、社員同士の居場所が把握しにくいという問題点があります。
そうなれば、社内にいながら探し回るということになってしまい、却って時間の無駄が発生することも。フリーアドレス制にすれば、ペーパーレスやコミュニケーションツールが必須になるので、すべての物事がオンライン上で解決していきます。だから、「場所が離れていても、オンライン上でつながれば問題はない」という考えもあります。しかし、それならいっそのことリモートワークにしてしまえばよく、フリーアドレス制にする必要もなくなります。
連携してチームで何かを作っていくような職種で、対面のよさを取り入れていくためには、だれがどこにいるのかが把握できないと、却ってやりにくいということになってしまいそうですね。
フリーアドレス制は、交流を図るのにとても効果的です。ですが、裏を返せば雑談も増えるということにも。日頃人々が話している会話はほとんど雑談でしょう。もちろん、そんな雑談の中からいいアイデアが生まれることもありますが、実際にはそんなことはほんの一握りです。現実はおしゃべりばかりで、仕事が進まないとなれば、会社のためにはいいとは言えないでしょう。
フリーアドレス制にするには、コンピュータ上から、必要な書類を閲覧したり、印刷したりというアクセスが必要になってきます。そうなると心配なのがセキュリティの問題です。企業の中にはその会社の生命線となるべき機密書類がある場合も。その危険を冒してまで、フリーアドレス制を導入するメリットがないという企業も多くあるでしょう。セキュリティを安全に保つにはまた別のコストがかかります。それでも、情報の流出が頻繁にニュースとなっている現状では、絶対に安全とは言い切れないのも事実です。会社によってはフリーアドレス制の便利さとセキュリティの不安を天秤にかけて、導入の検討をしないとなりませんね。
フリーアドレス制はリモートワークとの相性もよく、ゆくゆくは検討すべき事案になりそうです。ですが、それぞれの職種や企業で向き不向きがあるため、すぐに導入するのは難しいというところもあるでしょう。フリーアドレス制を導入しようと思ったら、自社のスタイルに照らし合わせて、できるところから改善していくのがおすすめです。