こんな会社が希望です!新卒の考える働き方改革とは?
昔は60歳定年といわれ、一つの会社に就職すれば定年までその場所で働き続けることが一般的でした。ですが、最近は給与のベースアップも期待できず、若者は「60歳を過ぎても働き続けないとならない」と感じています。
そのため、入社した時からすでに転職のことを考えているという新入社員も少なくありません。
このように長く働き続けるライフプランを考えている若年層は、企業選びでも柔軟な働き方ができるかどうかを重視して判断します。それでは、いまどきの新入社員はどのような働き方改革を望んでいるのでしょうか?
新入社員を知るために、まずはいまどきの大学事情について知っておきましょう。
一昔前の大学は大教室に大勢の学生が入り、出欠を取ることもなく、特に授業を真剣に聞いていなくても、要領よくレポートやテストの点数を稼げば単位がもらえたといったこともあったかと思います。
ですが、いまどきの大学は、定員厳格化の影響もあって、きめ細やかな指導が主流となっています。
そのため、多くの授業が少人数制で、座席指定をしたりクラス制をとったりする大学も少なくありません。そうなると、当然教授と学生との距離も近くなります。顔と名前が一致しているだけでなく、学生のクラブや生活状況まで知っているなど教授が細かいことまで把握していることも珍しくありません。
また、出席不良学生は教務から保護者へ連絡することになっているため、教授側も常に学生の出欠を把握しています。このように過保護なぐらい学生の動向を把握し、保護者と連絡を取っているのがいまどきの大学事情です。
また、きめ細かな指導は授業にも反映されており、授業の課題やテストなどは、一昔前のように不透明な採点は許されておらず、教授側は点数の付け方、模範解答などを学生に明らかにする義務があります。そのため、大学生の多くも個別で丁寧な指導が当たり前と感じており、一昔前の「見て覚えろ」「やりながら覚えろ」というやり方はいまどきの新入社員にはそぐいません。
一昔前の大学は、資格取得は各自で勉強するのが当たり前だったのに対して、いまどきの大学では、資格系専門学校と提携してカリキュラムを導入したり、専門教師が派遣されたりするケースが目立ちます。
積極的な資格取得が推奨しているため、学内に居ながらにして資格取得の勉強ができるだけでなく、中には授業のカリキュラムの中に資格試験対策が組み込まれているものや、無料で開講されているものなどもあり、広く様々な資格が取れるように工夫されています。
それだけ、いまどきの大学生にとって資格は大事なものであり、自分のスキルをはかる目安として利用されています。
同じく、大学の授業も「授業の目的は何なのか」「授業の到達度はどこなのか」ということが重視されていて、シラバスに沿った授業が求められています。
このように、いまどきの学生ははじめから全体像や目標を見せられることに慣れているため、全体像や目標を明確にしない指導は不信感を抱かせてしまうことにもつながります。
また、資格取得に関しては、すでに覚えやすいように整理された本や単語帳が売られているだけでなく、無料のアプリもたくさん用意されているので、いまどきの大学生は一から自分でノートを作るということはなく、完成形の本やアプリをそのまま学びます。
そのため、自分で時間をかけてノートを整理したり、まとめたりという作業は苦手です。
そんないまどきの大学生には、その場その場で説明して、聞いたことを各自でメモさせるという指導よりも、マニュアルがあり、それに沿って進んでいくという指導のほうが受けがいいようです。
いまどきの大学はTOEICやTOEFLの点数でクラス分けをすることもよくあります。特に外国語大学では、点数に到達しないと受けられない授業があることも。
そのため、いまどきの大学生は自分の成績を数値化されることに慣れています。
また、成績によって返済不要の奨学金がもらえたり、編入学時に推薦してもらえたりということもあるため、1点の差を気にする学生も少なくありません。その点では仲のいい友達同士も常にライバルという意識はあり、学生同士横のつながりで教え合うよりも、縦のつながりで教授に直接聞くということの方が多く見受けられます。
コロナ禍の影響で、大学の授業は一時オンライン授業になりました。
2020年は全面オンライン授業で、2021年はハイブリット型授業でした。ハイブリット型授業では、学生は対面授業でもオンライン授業でも好きな方を選べ、教授は一方で対面授業を行い、一方でオンライン授業をこなしました。これは、オンラインの環境が整わない学生や、友達が作れず孤独を感じる学生のための配慮からできたスタイルだったのですが、ハイブリット型授業では、ほとんどの学生がオンライン授業を選択し、大学に来た学生は少数でした。
これは、友達に会うことや交流することよりも、自宅からオンラインで授業に参加する方が快適だと思う学生が多かったということを意味しています。
2022年の今では、もうほとんどの大学で全面対面形式の授業に戻っていますが、多くの教授がオンラインの名残りから、授業の一部に動画を使ったり、課題提出にオンラインを使ったりしています。
また、コロナ禍以前は、授業中にスマホ操作禁止という授業が多かったものの、現在は、逆にスマホやパソコンを積極的に使うことが増えてきました。
そして、スマホが解禁になったことで、授業中ではノートを取らず、板書を写真で撮る姿も。座席が自由の授業では、後列の学生が遠くからでは見えにくい板書を一度スマホで取って、その写真を拡大して理解するというのが恒例になっています。
一昔前の大学を知っている人からすれば、驚いてしまう光景ですが、そんな光景も、超合理的な思考から生まれたものであり、彼らにはまったく悪気はありません。
また、オンライン授業では、オンデマンド形式の授業も多くありました。
これは教授が動画を録画しておき、学生は好きな時間に試聴して期日までに課題を提出するというスタイルだったため、この時間を有効活用してバイトしたり、プレ副業をしたりする学生も増えたといいます。また、倍速で試聴したり、ながら試聴したりするタイムパフォーマンスを意味する「タイパ」という若者語も誕生しました。
いまどき大学生はYouTubeも倍速で試聴すると言われています。
これから新入社員になる年代の学生は、オンライン授業も経験している時期の学生で、ハイブリット型授業の時にオンライン授業を選んだ学生が多かったところからもわかるように、効率よく時間を使うことを重視しています。
パソコンもそこそこ使え、良くも悪くも合理的な行動を好むと言えるでしょう。
それでは、いまどきの大学生の姿も踏まえ、若者はどんな働き方を理想としているのかを探ってみましょう。
2022年3月卒業や修了を迎える予定の大学生・大学院生に取ったアンケートでは、もし仕事の形態を選ぶことができれば、「テレワークを選択したい」という学生が82.4%にも上ったそうです。
いまどきの大学生はオンライン授業を受けてきた経緯もあり、オンラインにはとても好意的です。
また、実際の人恋しさよりも、便利なオンライン授業の方を好む傾向があることから、今後テレワークでの勤務を望む若者は増えていくことでしょう。もちろん、背景には現在がコロナ禍にあり、感染リスクがあったという点も考慮しなければなりません。
ですが、アンケートの中では「通勤時間がなくなれば、仕事に使える時間が増えると思う」という意見や、「現在もテレワークをしている新入社員で「テレワークが廃止されても働き続ける」は半数に留まる」という意見も見られ、コロナ禍が終息を迎えた後も、テレワークは合理的と考える若者は少なくないのではないかと思えます。
現在、新入社員の約半数が10年以内に転職を考えていると言われています。
そのため、転職に有利な専門性が得られたり、スキルアップができたりする企業を就職先に選ぶ傾向にあります。逆に、専門性が得られたり、スキルアップができたりすれば、給与が多少他より少なくても気にしないという人も。
いまどきの若者は長い不景気しか知らない世代なので、「欲のない世代」「無駄遣いをしない世代」とも言われています。
給与アップのために一生懸命残業したり、働いたりするより、プライベートを重視したいと考えている人も少なくないでしょう。
かつては一つのところに長く勤めることが良いこととされていましたが、いまどきの新入社員は終身雇用の時代は終了し、年功序列制度から実力主義に社会は変わったと考えているため、実力主義の中で長く働いていくためにも専門性やスキルを習得することに重きを置くことが大事と考えています。
現在、夫婦共稼ぎの世帯は増えていて、それは、年々上昇傾向にあります。
それでなくても、少子化が進む時代、一人っ子同士の結婚も増えてくることでしょう。そんな中でも、子育てや介護などのニーズは依然としてあるものなので、子育てや介護をしながらも働き続けられる環境は仕事選びにおいて重視されると考えられます。
長いキャリアの中で、一時的に子育てや介護で時間がとられるということはよくあることであり、そんなとき、今まではキャリアを手放さなくてはなりませんでした。
現在も大きな問題となっているものに介護離職があり、その際、柔軟な働き方ができれば、できれば離職したくない、キャリアを手放したくないと考えている人もいるのではないでしょうか。
特に最近は、子育てや介護も仕事と両立できるように、ニーズに呼応して施設やサービスなども充実してきています。共稼ぎ世帯が増えてくることから今後はさらにサービス充実が望まれるでしょう。
そうなると、働き方改革で、時短勤務やパートタイムなどの柔軟な働き方にスイッチできるのなら、離職せずにうまく乗り越えられるケースも多いはずです。
また、子育てや介護でなくても、夢をかなえるために勉強の時間が欲しいと考える人もいるでしょう。うまく時短勤務を利用して、その合間でやりたかった仕事や新しい勉強にチャレンジできる選択が可能ならば、そんな環境を得たいと思うのは当たり前のことでしょう。
昔は子育てといえば母親がメインでするものでしたが、いまどきの夫婦はイクメンという言葉があるように、男性も子育てに積極的です。
社会も男性の育児の参加を強く促していて、自分自身が子供の成長に関わりたい、子育てそのものをしたいと考える男性も増えてきています。そのため、「男性トイレにも授乳室がほしい」と思う人まで出てくるようになりました。
一昔前の企業戦士とは違い、いまどきの若者は家族を中心に仕事やキャリアなどを考えています。
そんな中、育児休暇や有給休暇を取りやすい環境は若者が重視する要素のうちのひとつとなっています。そうでなくとも、給料が上がりにくい時代。会社より家庭を中心に考える若者が多いのは仕方がないことでしょう。育児休暇や有給休暇が取りにくい会社よりも、育児休暇や有給休暇を取ってリフレッシュして戻ってくることを、新しい経験を携えて戻ってくるとプラスに考えてくれる会社を求めています。
年功序列制度の終了や実力主義の導入など、様々に変化している時代の中で、新しい世代の若者たちは常に不安を感じています。
だからこそ、新卒採用で入社しても一生安泰、ずっと同じ状況が続くとは思っていません。
彼らの両親はバブル期からバブル崩壊を経験した世代。父親が家に不在だった家庭や、両親がリストラにあった家庭も少なくなかったでしょう。そんな栄枯盛衰を見てきた彼らの望む働き方改革は、自分たちのプライベートを軸に据えたものです。
彼らにとって家庭が一番大事なもので、会社は二の次三の次です。家庭の事情のためには転職も厭いません。そもそも超合理主義の彼らは、会社への忠誠心などはもともと持ち合わせていないので、会社に合わせて自分が我慢するぐらいなら、さっさと転職を選びます。そんな彼らに「石の上に三年」なんて言葉を投げかけても、まったく心に響かないでしょう。
それよりも、彼らの気持ちを汲んで、いろんな働き方を実現できる働き方改革を実現するほうが得策です。新入社員たちを「扱いにくい」と一刀両断するのは簡単ですが、彼らが願う働き方改革は既存の社員たちにとっても働きやすい環境を築きます。
時代の変化に合わせて、人々の意識も変わってきています。今の若者たちの意識を知ることで気づきにつながればいいですよね。