従業員満足度とは?社員が喜ぶ取り組みとそれによって得られる会社側のメリットを解説
近年、働き方改革の影響もあり、企業の間で従業員満足度が注目されています。いまや男女の性別だけでなく、年齢、国籍すらも問わなくなってきた日本の労働市場は、様々な形態で働く従業員によって支えられています。
一昔前は、一度就職した企業で、定年まで勤めたものですが、今や、一度も転職することなく、定年まで迎える人の方が少なくなってきていることも。いまどきの従業員は常に自社と他社を天秤にかけて、自分の都合や状況に合わせて転職のチャンスをうかがっているのも事実です。
そんな中で従業員に愛社心を持って、一つのチームとして組織の中で絆を築いてもらうためには、従業員満足度は無視できないものになりつつあります。
そこで、ここでは、従業員満足度に今企業が注目する理由と、従業員にとって満足度が高い取り組みとはどんなことなのかということを具体的に見ていくと共に、従業員満足度を上げることで会社側が得られるメリットについて解説していきます。
それでは、なぜ今、従業員満足度が注目されているのでしょう?
昨今の少子高齢化によって、日本の労働市場における労働人口は減少傾向にあります。今までは、夫婦は結婚すると、男性は外に働き、女性は家で家庭を守る、60歳を過ぎたら定年退職をして、年金暮らしになるというのが一般的でした。
ですが、現在は、労働人口の減少に伴い、結婚したあとも女性が専業主婦になることは珍しくなり、年金受給が遅くなったことで、必ずしも60歳で定年退職することがベストとは言えなくなってきています。
夫婦単位で言えば、昔に比べて、今の方が労働に費やしている時間が増えているともいえるでしょう。また、以前とは比べものにならないほど、外国人が日本に定住するようになり、外国人労働者も増えてきています。
つまり、労働人口の減少に伴って、従来には見なかった様々な人達が労働市場に参入してきているということが言えます。
今までの労働市場は成人男性だけをターゲットに労働環境を整えればよかったのですが、様々な人たちが労働市場に参入してくるようになると、そういうわけにはいきません。多様な背景を持つ人のために、労働環境も再整備する必要が生じてきているのです。
例えば、長い人生の中には、子育てや介護など様々なライフイベントがあります。
今までは家庭を守っていた女性が主にこれらの雑事をこなしていました。しかし、女性が労働市場に参入してくるようになれば、彼女らに合わせた労働環境が必要になってきます。女性も働いていれば、家庭内で一人で解決するのが難しい事象も増えるため、夫も育児休暇や介護休暇などを取る必要が出てくるというわけです。
また、外国人労働者においては、外国の風習や生活スタイルに合わせた環境の整備も必要となってくるでしょう。このように、従業員の背景も多様化しているため、企業もそれに合わせて、柔軟に労働環境を整備する必要が求められているのです。
従業員にとって、従業員満足度が高いことは働きやすい職場を意味し、そんな職場はやめる人も少なくなるため、結果的に安定した人材が確保でき、時間をかけて優秀な人材を育てやすい状況にもなりえます。そこから、企業の間では現在従業員満足度が注目され、より良い人材を確保するために、様々な取り組みが行われているのです。
それでは、従業員満足度が高い取り組みとはいったいどんなことでしょう?
従業員満足度が高いものとして、一番わかりやすいのが給与・報酬のアップです。多くの労働者は給与や報酬のために働いています。特に外国人労働者がわざわざ異郷の地に赴いて働いているのは、別に日本の文化が好きなどの理由ではなく、日本だと安定した賃金を得られるからです。
給与や報酬のアップは、従業員のやる気に直結しますし、それだけ個人に報いてくれる会社なら、自然と愛社心も芽生えるでしょう。
また、金銭的余裕がなければ、別のところで働いて、さらに収入を増やしたいと考えるのは当然のことなので、その分、本業に対する態度が浮ついてきます。なるべく本業では力を使わず、他の仕事をするための体力を温存したいと考えるでしょう。
また財テクなどを始めて、仕事中も気が気でないという状況に陥らないとも限りません。そう考えると、給与・報酬のアップは、従業員の心の余裕にも直結し、本業に真摯な態度で臨んでくれる結果となり、企業にも従業員にも満足度が高い取り組みとなることでしょう。
有給が多くても取得しにくければ、有給自体が形骸化してしまい、目の前ににんじんをぶら下げられているだけに、かえって従業員が不満を抱くことになります。そのため、有給があれば、それが取得しやすい環境を提供しなければなりません。
有給が少なく、取得しにくい職場は、個人の様々な状況に対応しにくくなります。例えば、家族が病気になった、子供が不登校になったなど、生活の中には色んな不測の事態があるものです。そんな時に、有給が少なく、取得しにくければ、ちょっとした生活のつまずきで「仕事と家庭が両立できない」ということが起こりえます。
そうなると「もう働き続けられない」と考えてしまう従業員も出てきてしまい、長くその職場で働いていくということが難しくなってしまうでしょう。その点、有給が多く取得しやすければ、家族の様々な状況に対応できるだけでなく、子供の成長の節目にも立ち会える余裕も持て、仕事をしながら家庭も大切にすることが可能となります。
終身雇用ではなくなった今、家庭やプライベートを犠牲にしてまで仕事にすべてをささげるような生き方は流行りません。仕事の替えはあっても、家族の替えはないので、家族との生活を充実させたいと思う従業員が多いのも当然なことでしょう。
様々な背景を持つ労働者の中には、夢を追いかけたいと考えている人も少なくありません。かつては俳優になりたい、バンドマンになりたいと思っていた人も、年齢とともにチャンスもなくなり諦めざる得ませんでした。
しかし、最近はYouTuberなど、年齢に関係なくいつでも活躍できるチャンスが広がっていて、いつまでも夢を追いかけられる機会が与えられています。それなのに、副業禁止の会社で一つの仕事しか選べないというのはナンセンス。副業禁止の会社で起業したいと考える従業員がいれば、今の仕事を辞めて、起業するしか方法がなくなってしまいます。
優秀な人ほど自分の力を試すために外に外に出ていきたがるもの。そうなれば、結果的に優秀な従業員を失うことになり会社にとってもデメリットです。
生涯同じ職場にいれば、変化も少なく、その分習得した知識でずっと働いていけますが、一方で、それ自体がリスクだという考えもあります。いざ今の仕事がなくなった時に、転職するだけのスキルがなければ、人生100年時代と言われている昨今、従業員は長く働いていくことができません。
そのため今の若い社員たちは、スキルアップのためにわざと転職をしたり、自分のキャリアになる仕事を選んだりするとも言います。そんな人たちにとって、仕事をしながら学べる環境は大変魅力的です。
これから社会的に重視されるスキルを学べるなら、自分への先行投資という考えで、給与の安定よりも成長ができる環境を選びたいという人も少なくないでしょう。
多くの従業員にとって、働く時間はけっこうな時間を占めるので、日々の生活の質がよければ、それだけ満足度が高まるのも当然のことです。
特に、人にとって食に関することは大きく、いい加減な食生活を繰り返せば、肉体的にも精神的にも病んでくるという事例もあります。それだけに、食事がおいしかったり安かったりすれば、それだけで満たされる気持ちも大きく、食生活が充実すれば、多少の激務でもこなせてしまうというのも事実でしょう。
恋愛の中でも「胃袋をつかむ」ことで結婚まで決まることもあり得ることです。社員食堂や夜食が充実していれば、自然と会社に長居してしまうこともあるでしょうし、いつもご飯を食べる場所として帰属意識を感じてしまうこともあることでしょう。
従業員にとって会社は生活の大きな部分を占める場所。だからこそ、そこでの出来事は小さなことも大きく受け止められがちです。
特に、人事評価などで不公平な扱いをした場合、仲のいい同僚同士だったとしても、それを機に関係がぎくしゃくしたり、恨みを買ったり買われたりということはよくあることです。
そもそも適正で公平な人事評価があってはじめて人は向上できるもの。納得できない評価を下されたら、真摯に結果を受け止めて自分の学びにしようとは思わないでしょう。それどころか、「あの人ばかりがひいきされている」「自分ばかりが評価されない」と思ってしまえば、不満しか感じないでしょう。そんな会社で貢献したいとは思わないでしょうし、さっさと辞めて、自分を正当に評価してくれるところで働きたいと思うのは当たり前のことですよね。
最近の働く世代は、仕事も家庭も忙しいのが普通です。
かつては結婚すれば、男性は仕事ばかり、女性も家のことばかり専念していればよかったのですが、今は違います。結婚しても共働きをするのが普通なので、家庭のことも夫婦で共に関わらなくては回っていきません。特に、最近は少子高齢化で家庭でもマンパワーが不足しているため、介護や育児などを少数の人で支えなくてはならなくなりました。
そんな状況にある今どきの働く世代にとって、ワークバランスの取れた働き方ができる会社かどうかは、仕事が続けられるかどうかにも関わってきます。
介護離職という言葉が社会問題になったように、制度が充実していなければ、本人に働き続けたい意志があったとしても、やむ得なく辞めざるを得ないでしょう。働く世代にとって、仕事ができなくなることは金銭的なことも含めて痛手が大きなこと。一時的な休暇制度を利用して働き続けられるなら、そんな会社の方が選ばれるのは当然ですよね。
仕事をする上で、仕事環境が整わなければ、それだけストレスを感じることも多いことでしょう。
例えば、プログラマーなのに自分専用のパソコンが支給されないとなれば、仕事にはならないだけでなく、士気も落ちてしまいますよね。コピー機1つとっても、よい機種と悪い機種では出来上がりのスピードが全く違います。大学の教授の中には、研究室の機器や機械の状況で勤務先を決める人もいるぐらいです。
高度な仕事になればなるほど、仕事環境の良し悪しが、個々の成果にも影響してくるものなのでしょう。当然、整った仕事環境は、それだけ個人も好待遇に迎え入れられていると感じられ、従業員の満足度にもつながりやすくなります。
さて、従業員が満足することを見ていきましたが、従業員の満足度が果たして企業にどのような影響を及ぼすのでしょう?
ここでは、従業員満足度が企業側にどのようなメリットがあるのかを見ていきます。
従業員満足度が低い会社では、しょっちゅう人が辞めるので、人材募集ばかりしなくてはなりません。状況によっては、入社1年目の新人が、会社の中では最年長なんてことにも。そうなると、新人が新人を教えるということになり、適切な指導は期待できないでしょう。
また、本来の業務よりも研修ばかりに時間がとられるということにもなります。ベテランがいなければ、ベテランから学ぶということもないですし、人材を見極めて適材適所に配置ということも不可能でしょう。
常に人が足りないとなれば、毎日が綱渡りという状況にもなりかねません。人材雇用が安定することは、会社が発展していくための重要なファクター。従業員満足度が高い会社では、従業員の離職率が低くなり、その分人材雇用が安定します。そうすることで、長い目で人材を育てることができます。
従業員満足度が高い会社は自然と口コミで広まるもの。当然学生に人気のある職場になるでしょうし、転職市場でも、みんながそこに就職したいと思うことでしょう。そうすれば、その分優秀な人材も集まりやすくなります。優秀な人材とは何も学校の成績がいいというだけではありません。
例えば、英語が話せる、コンピュータスキルがある、コミュニケーション能力が長けている、努力することができるなど、様々な基礎能力が備わった人たちです。そんな優秀な力を持った人が集まれば、会社も様々な分野に手を広げ、大きく成長することができるでしょう。
人材を採用するのは常に手間がかかるもの。履歴書に目を通したり、面接をしたり、時間がかかったりとコストばかりが消費されていきます。人の流動が多い会社は、たとえよい人材を採用することができても、すぐ辞めてしまい、常に人材の確保に頭を悩ませている状況です。
ですが、従業員満足度が高い会社は人材の移動が少ないため、新規の人事採用の必要性も減ります。従業員の流動性が減れば、結果的に人事採用のコストが下がるということにも。浮いた分のコストを他の成長ファクターに投下することができるようになります。
従業員満足度が低い職場では、従業員同士の関係はぎくしゃくしやすく、嫉妬や不公平、猜疑心などの負の感情が現れやすくなります。
それに対して、従業員満足度が高い職場では、会社の一員であることに誇りを感じたり、先輩や上司を尊敬したり、素直に自分自身をこの会社で成長させたいと思えたりするので、チームの連帯感が生まれます。
そうなると、従業員同士がお互いに助け合ったり、支え合ったりするので、会社としても円滑に回り、さらに大きな組織力となって会社に貢献してくれる結果となるでしょう。
従業員満足度が高い会社は、結果的に顧客にもよい影響を及ぼします。
従業員がいつ辞めようかと考えているような会社では、従業員のモチベーションは低く、仕事に対しても誇りを感じられないでしょう。そうなれば、必然的に顧客も商品やサービスに魅力を感じなくなります。
ですが、従業員満足度の高い会社で働く従業員は、モチベーションも高く、仕事に誇りを感じる傾向にあるため、その分、顧客に対しての対応が高くなります。従業員が自社製品やサービスに自信を持っている姿は、自然と顧客にも伝わるもの。従業員が意識をもって接客できれば、顧客の満足度も必然的に高くなりますよね。
従業員満足度が高ければ高いほど、会社には好循環が訪れます。
そして、前向きな従業員のプラスの感情は、ここで成長したいというモチベーションにもなります。
組織としてさらに大きな化学変化を起こすことも可能でしょう。
そう考えると、従業員満足度は組織にとって決して無視できないファクターでもあるでしょう。