人事評価制度が上手く運用できない!よくある課題とその対策
世の中の多くの会社が人事評価制度を設計し運用していますが、人事評価制度は法律により必ず定めなければならないというものではないため、会社によってその制度やルールは様々です。
社員を雇って会社を経営するためには、社員の成長を促したりモチベーションを向上させるためにも人事評価制度はとても大切な制度となります。
人事評価制度を設計し運用を始めようとすると人事評価の制度自体を考えるところから始まり、運用ルールの整備や社員への周知など、人事評価制度を運用するために多くの時間とパワーを割く必要があります。
また、外部の人事コンサルタント会社や社労士などに制度設計を依頼した場合には決して安くはない金額を払い人事評価制度を導入することになります。
多くの時間や労力、そしてコストをかけて構築した人事評価制度ですが、実際に運用を始めてみると、思っていたイメージとは異なる課題や問題が出てくるものです。
そして、その課題や問題を解消しないまま人事評価制度の運用を続けてしまうとやがて人事評価制度は形骸化し、社員のモチベーションの低下、会社に対する帰属意識等も薄れて行ってしまう危険性があります。
人事評価制度を構築して運用を始めてみたはいいが、上手く運用できてないという場合のよくある課題と解消方法を紹介します。
人事評価制度の運用を始めてみたが上手くいかないケースの1つ目に、評価制度の目的が充分に浸透していないまま評価制度の運用が行われているケースです。
何のために人事評価制度を構築し運用しているのかは、経営者や人事評価制度を構築した側の立場からすると目的は明確ではっきりしていると思いますが、実際に評価をされる社員からしてみると、何のために時間を掛けて評価を行うのかの目的が充分に理解されないまま運用されているケースがあります。
人事評価制度の本来の目的は被評価者の成長を促すための制度ですが、評価の結果によって賞与の金額が異なったり、昇進に影響するなど、評価点や評価結果がその後どのように使われ、自分にどのような影響があるかによって評価制度の目的や位置づけは異なって見えることになります。
評価制度の目的が曖昧だと、なぜ忙しい中で時間を使って評価シートを入力する必要があるのだろうか
と評価制度に真剣に取り組む意欲が少なくなることもあります。
評価制度は評価者からの評価フィードバックを受けて今後の成長を促すこともありますが、自分自身で業務の振り返りや成果を見直すことにより、現状の把握や改善点の検討など、自分にとっても大切な時間を生み出すことができます。
評価制度の目的が曖昧な場合や、充分に浸透していない場合には、被評価者である社員に向けて充分に人事評価制度の意味と目的の啓蒙を行うことが大切です。
人事評価制度の運用を始めてみたが上手くいかないケースの2つ目として、「評価期間が短い」ケースが考えられます。
人事評価制度は被評価者の成果や能力を評価し、そのフィードバックを本人が認識することで本人の能力開発を促していくものです。
そのため、短いスパンでフィードバックを多くすればよいという観点から1ヶ月に1回、数週間に1回など短いサイクルで評価制度を運用するケースがあります。
評価者である上司と被評価者となる部下のコミュニケーションが増えるという面ではメリットはありますが、評価期間が短いために短期的な目標になってしまうことや、短期間では能力もそれほど変わるものではない、評価作業にかかる回数や時間が増えてしまうなどの課題が考えられます。
そのため人事評価制度の評価期間は半年や1年の周期、もしくは短くとも3ヶ月(四半期)程度の期間で評価制度を運用することが望ましいと考えます。
人事評価制度は評価期間における被評価者の成果や行動について、評価者が評価点をつける作業が必要となります。
海外の人事評価制度ではNoRatingと言って点数付けを廃止する流れもありますが、まだまだ日本の人事評価制度は評価点をつける制度が主流であることは変わりません。
この評価点は会社によってS、A、B、Cのようなアルファベットや、1から5の5段階評価、100点満点の点数など評価点の考え方も様々です。
しかし共通していることは評価者である人間が評価点をつけるということです。
評価者である人間が評価点をつけるため、簡単にいうとAさんは100点だと思ってもBさんは90点、Cさんは80点だと思うことがあるように人によって点数の付け方に差が出てしまいます。
評点の内容は被評価者からみると「自分の作業を良く評価してくれる」とプラスに受け取られることもあれば、「こんなに頑張ったのに評価してくれない」とネガティブに受け取られることもあります。
評価をする評価者も、そして評価をされる被評価者も、曖昧な評価基準のまま評価点をつけてしまうと、評価点に対する認識の相違が生まれやすく、本来被評価者の成長を促すための評価が、逆に成長意欲を無くしてしまうなどモチベーション低下にもつながってしまいます。
そのため、評価基準はできるだけ明確に定義する、客観的な数値や達成基準で判断できるようにするなど、評価基準についてできるだけ認識の相違が起きない評価基準を作ることが大切です。
評価制度の運用が上手くいかない4つ目のケースは評価者に着目した課題です。
どんなに人事評価制度が優れていても、その評価制度上で評価を行う評価者に、評価を行う上で必要なスキルが備わっていないと評価制度は上手く運用できないケースが考えられます。
では評価者のスキルとは具体的にどのようなスキルでしょうか。
評価制度とは一定期間の被評価者の成果や能力を評価し、今後の成長を促すために行うものです。
そのため評価者に求められるスキルは、被評価者の成長を促すことができるスキルとなります。
被評価者の成長を促すためには、単に話がうまいというわけではなく、以下のように様々なスキルが必要になります。
評価者は会社側の立場に立って評価をするため、人事制度の目的や評価基準、会社としてどんな人物を育てたいかなど会社側の想いを把握することも大切です。
また、評価者として被評価者へ、時には厳しく時には柔らかく、相手に伝わるフィードバックを行うことが求められます。
新任のマネージャーなどこれまで評価者として評価をしたことがない場合や、部下の育成という面にあまり重きをおいていないマネージャーなど、評価をする上での評価者としてのスキルや考え方を身につける必要がある場合があります。
会社内外で評価者を集めた評価者研修や、評価者向けの人事評価制度の説明会などを通して、評価者としての能力を向上する機会を作っていくことが大切です。
冒頭で書いたとおり、人事評価制度は法律による制約や縛りがないため内容や運用は会社ごとに自由に決めることができます。
そのため、今回紹介したケース以外の課題や問題もその会社ごとに様々なものがあります。
また評価制度は1度決めたらそのルールで運用しなければいけないものではなく、常により良いやり方に改善していくことが可能です。
評価制度を1サイクル回した後には、評価制度自体についてのアンケートや意見を社員から募り、今後の評価制度の改善につなげていくことも効果的です。
大切なのは評価制度を運用している中で発生する1つ1つの課題を認識し、課題をそのままにせず、解消しながら人事評価制度自体を改善し続け、会社にあった人事評価制度にしていくことが大切です。