部下に「話すことがない」と言われないために!1on1ミーティングを成功させるために上司が気をつけるべきこと
1on1ミーティングとは、上司と部下の間で行う1対1のミーティングのことです。面と向かってミーティングを行うことで、お互いの考えを共有したり、組織が目指すべき方向を確認したりすることができます。
ですが、部下側には意外と1on1ミーティングを好ましく思っていないという声も聞かれます。
中には「特に話すこともないのになぜ1on1ミーティングをしないといけないのか?」と思っている人も。それはなぜでしょう?ここでは、1on1ミーティングで部下が「話すことがない」という理由を挙げていきます。また、その上で、1on1ミーティングを成功させるための上司の気を付けるべきことをアドバイスします。
1on1ミーティングは、部下の育成を目的とした話し合いです。定期的に行われ、人事評価面談と同じく上司と部下の1対1の面談となりますが業績の直接的な評価は行いません。実際に1on1で話すべきトークテーマは、プライベートに関することから今後のキャリア形成など何を話してもかまいません。
1on1ミーティングは常に部下の声を聴いて、彼らの希望を汲み取り、労働環境を整えることで、離職率を抑えるために有効な方法とされています。いまどきの新しい人材が自分にとって好ましいと考える労働環境はどのようなものなのかを知ることができる機会となります。
部下のための1on1ミーティングではありますが、実は部下の中には「話すことがない」という声も多数あります。それでは、なぜ、1on1ミーティングで部下が話すことがないというのでしょうか?その理由を考えてみました。
1on1ミーティングは本来、部下が上司に悩んでいること、改善してもらいたいことなどを話す場です。だから、上司には歓迎されなくても、部下には歓迎される面談のはず。
ですが、意外と嫌な気持ちになる部下は多いようです。
「1on1ミーティングの目的がわかっていない」「何を話したらいいのかわからない」という漠然とした思いがあるからでしょう。そもそも、自分のことを話すことが許されているということを知らない部下も多いでしょうし、たとえ知ったとしても、日本特有の裏表のある社会の中では、それを本気に受け取る部下も少数でしょう。そんな中で、正直に本音を話せば、あとで馬鹿を見ることにならないかと訝しがる気持ちもあるのかもしれませんね。
1on1ミーティングで「何を話してもいい」と言われても、よほど親しい友人でもない限り、部下が自分から心を開いて、思っていることをなんでもあけすけにいうということはありえません。それでなくても、部下から上司に注文を付けることはなかなか難しいことです。よほど信頼関係が築けていなければ、差しさわりのない会話で終わらせてしまうことが普通でしょう。
いまどきの若い世代は、一昔前のような家族的な会社は望んでいません。転職することも珍しくない中、会社も一度就職したからといって、一生骨を埋める場所とは思っていない人が多いでしょう。そうなるとお互いの人間関係はドライに徹したいと考えるのも当然です。そんな部下とうまく信頼関係を築き、部下の気持ちを汲み取るのはなかなか至難の業です。そんな状況では、部下が「話すことがない」と言ってしまう気持ちもわかりますね。
部下の中には、いろいろと話したいと思っていても、上司と1対1だと緊張して話しづらいという人もいるでしょう。学校でも、たくさんの生徒が先生とワイワイ話すことには抵抗がなくても、1対1の面談となれば、途端に口をつぐんでしまう生徒は少なくありません。同じように、集団の中では活発に話してくるのに、1対1になったとたん、口数が少なくなるという部下もいることでしょう。部下にとって上司は評価を下す存在でもあります。面と向かって困っていることを聞かれたら、早くその場から逃れたくて「話すことがない」と言ってしまうかもしれません。そんな部下の場合には、リラックスできる環境や上司から話しやすい話題を振ることも大事かもしれませんね。
部下の中にはもともとおとなしい性格で、おしゃべりではないという人もいます。1日のうちに一言も交わさないという本当に無口な人もいることでしょう。ですが、それがその人の特性でもありますので、そんな人に無理に話をさせても辛いだけでしょう。
無口な部下には、積極的に上司の方から話をするようにしましょう。時に一人でしゃべっていることになったとしても、意外と部下には響いていることも。上司の経験談から学ぶことも大いにあるはずです。
部下と上司の1対1のミーティングと聞けば、「業績を批判されるのでは?」「日頃言いにくいことをずばり言われてしまうのでは?」と身構えてしまうのもわからなくはありません。そうなると、部下からすれば、「話すことがない」と言って早く逃げたいところでしょう。
そこで、1on1ミーティングでは、評価されることがないことをきちんと伝えることが必要です。その上で、部下が自由に発言できる環境づくりをしていきましょう。日頃から、厳しい上司だったり、怒ってばかりいる上司だったりしたら、部下もなかなか本音は言えません。時には上司も自分の失点を部下に話して見せることも大事です。警戒心がなくなれば、部下も気軽に言いたいことを言ってくれるようになるかもしれませんね。
それでは、1on1ミーティングをスムーズにいかせるために、上司がやってはいけないこととは何でしょう?ここでは、具体的に考えてみましょう。
1on1ミーティングは、部下が主役のミーティングです。ですが、上司の中にはついつい自分がしゃべってしまって、部下にしゃべる暇を与えないことも。そうなったら、1on1ミーティングの本来の趣旨からはずれてしまうことになります。
部下の中には、なかなか話し出さない人もいます。それを察せずに、口火を切るつもりで、上司から話し始めて、ついつい止まらなくなってしまったらどうでしょう。上司の話したい気持ちはわかりますが、ここはあくまで部下が主役。上司のしゃべりすぎには気を付けて、部下に主体的に話してもらうよう努めましょう。
和やかにミーティングは進んだものの、振り返って考えたら、ただ雑談をしただけだったということもよくあることです。話のきっかけや、緊張をほぐすために雑談から始めることはありますが、盛り上がって始終それで終わってしまっては、1on1ミーティングが成功したとは言えません。
部下にしても、何のためのミーティングなのかと疑問が残ることでしょう。雑談から始まっても、最後には部下に思っていることを話してもらうという最終目標に到達できるよう、常にゴールを意識しながら、上司がうまくコントロールして、ミーティングを進めていきましょう。
1on1ミーティングで絶対にやってはいけないことは部下の話を否定することです。部下がせっかく勇気を出して上司に相談しても、否定されてしまったら傷つきます。いまどきの若者は傷つくことに敏感です。常に空気を読んだり、周りと合わせたりして生きてきた年代なので、傷ついたらすぐ自分の殻に閉じこもってしまうでしょう。
そもそも、褒めて伸ばす教育を受けてきたこの年代の部下たちは、叱られたり、否定されたりすることにも慣れていない人も多いはず。そうすれば、二度と上司を信頼してくれることはありません。1on1ミーティングでは、部下の言いたいことを言う場なので、基本的に否定はしません。たとえ否定するとしても、オブラートに包んで、傷つかないようにやんわりと諭すべきです。
部下がなかなか話をしないということで、困った上司が質問ばかりするということもよくあることです。ですが、質問攻めは「まるで尋問されているようで嫌だ」という人も少なくありません。始終質問攻めで終わるミーティングは、そのうち疲弊してくるので、部下が「やりたくない」と思ってしまうことにもなりかねません。そうなれば、1on1ミーティングの成功からは程遠くなってしまいますね。
上司の方とすれば、何か会話が弾む共通点が見つかればいいと考えてのことかもしれませんが、実際にはなかなかそういった共通点も見つからないでしょう。上司の中にも、話上手な人ばかりがいるわけではないので難しいところ。せめて、質問攻めに思われないように、相槌を入れたり、感想を入れたりしながら、なるべく和やかにミーティングが進んでいくよう工夫しましょう。
1on1ミーティングは何を話してもいいとはいうものの、デリケートな内容については注意が必要です。上司と部下の関係が異性同士だったら、セクハラだと思われることもあるからです。特に、家族のこと、恋人のこと、結婚のこと、持病のことなどは、慎重に扱った方がいいでしょう。少なくとも、上司の方から聞くことは避けた方が無難です。
また、デリケートな内容は、仮に部下から相談されてもどうしていいのかわからず困るということもあり、相談を受けた上司の方が悩んでしまうことも。話がデリケートな方に向かないようにうまく舵取りすることも大事です。デリケートなことだなと思ったらこちらからは掘り下げないようにしておくほうがいいでしょう。
それでは、1on1ミーティングを成功させるために、上司がやるといいこととはどういったことでしょう。ここでは、上司がやるべきことを具体的に見ていきましょう。
1on1ミーティングの目的は、部下の育成とモチベーションの向上です。定期的にミーティングを行うことで、部下が自ら反省し、成長につなげることを目指します。そのためには、部下にも1on1ミーティングの目的をしっかり意識させ、行う意義を理解してもらう必要があります。
そうすることで、話す内容もおのずと変わってくるでしょう。そうなれば、部下も自分の中で具体的な成長の姿を想像し、それに向かって努力していくことになるでしょう。そして、上司はそれを傾聴し、手助けするのが役割。そういう役割をうまく果たせてこそ、初めて1on1ミーティングは成功したと言えるでしょう。
1on1ミーティングで、部下の気持ちを引き出すのはなかなか至難の業です。時には、部下自身が、特に言いたいことを意識していないことも。ですが、人は「なんとなく嫌」、「なんとなく合わない」という感覚はあるもので、積もり積もればけっこうなストレスにもなります。そんなストレスを抱えると、決定的な何かがあるわけはないのに、ふとした瞬間にいきなり糸が切れたみたいやる気がなくなったり、職場に来なくなったりする人も少なくありません。そうならないためにも、問題の芽は早めに摘むことが大事です。
そして、そんな時には、上司が話の中から部下の解決してほしいことを引き出す必要があります。部下のちょっとした違和感を察知できて、離職を回避することができれば、1on1ミーティングをやった甲斐はあるといえるでしょう。
人それぞれ価値観が違うもの。特に上司と部下の年齢が離れていれば、ジェネレーションギャップもあるし、性別が違えば、ジェンダーギャップもあるでしょう。そうなると、お互いの気持ちはなかなかわからないことがあるものです。そんな時は、上司は部下の話の中から部下の価値観を探る必要があるでしょう。彼らの価値観がわかればおのずと彼らの解決してほしいこと、ストレスに感じることもわかってくるはず。部下がそれを伝える言葉を持たないなら、上司が先回りしてそれを言葉にしてあげることも、上司と部下がよい関係を結ぶためには必要なことです。
そして、先手先手で部下の困りごとに対応することで、部下もおのずと上司のことを頼りに思うはずです。そういった関係が結べれば、1on1ミーティングは成功したといえるでしょう。同じ目標に向かってチームで頑張っていくこともできそうですね。
1on1ミーティングの主役はあくまで部下です。そして、上司の役割は傾聴して、部下の手助けすることです。そういった意味では、「上司として助けられることがないか」と聞くことは、1on1ミーティングのもっとも根幹となるところで、この回答が得られたら、それだけで1on1ミーティングは成功したといえるでしょう。上司と部下はあくまでも二人三脚。助けて支えあう同じチームの一員です。
そして、1on1ミーティングでは、上司は部下を助ける役割を与えられていますが、部下が成長すれば、きっと今度は部下が上司を助けてくれるはず。それまでによい関係を築いておくことは大事なことです。1on1ミーティングを通じて、部下が成長してくれれば、結果的にそれはチームをより堅固なものにできるでしょう。
1on1ミーティングで、上司が特に把握しておくべき部下の動向として、将来のキャリアの方向性があります。キャリアの方向性がわかることは、今後、部下に指示を出すための大きな参考になります。なるべく部下の希望が通るよう、それに向かって仕事を進めていくことも大事なことです。そして、将来のキャリアに結び付くとなれば、部下の方も無下に今の仕事を手放そうとはしないはずです。そうなれば、キャリアを積ませると同時に、やる気もうまく引き出せて、離職を防ぐことも可能です。
1on1ミーティングが成功するためには、部下の意欲も必要ですが、上司の会話力も必要になってきます。上司の中にも、相手から話を引き出すのがうまい人もいれば下手な人もいるでしょう。
そんな中で、うまく部下の気持ちを聞き出して、成長につなげていくためには、上司にもその力量が求められます。何よりも大事なことは1on1ミーティングの目的を見誤らないこと。雑談から始まったとしてもちゃんとテーマを見失わずに、最後にゴールに到達できて、部下がこの会社でさらに自分を成長させたいと思うようになれば1on1ミーティングは成功です。